山形大学理学部
数理構造特選
F
数理科学特別講義
II
————–
曲線と曲面
田崎博之
2013
年度i
目 次
第
1
章 曲線と曲面の基礎1
1.1
平面曲線の概念. . . . 1
1.2
平面曲線. . . . 1
1.3
空間曲線. . . . 2
1.4
空間内の曲面の概念. . . . 3
1.5
第一基本形式と第二基本形式. . . . 3
1.6
曲面の曲率. . . . 4
第
2
章 曲率と長さ、面積、体積5 2.1
曲線に関係する長さ、面積と体積. . . . 5
2.2
曲面に関係する面積、体積. . . . 6
2.3 Gauss
の基本定理. . . . 7
第
3
章 地図投影法8 3.1
正積投影図法. . . . 8
3.2
共形写像. . . . 8
3.3
正角投影図法. . . . 10
3.4
三角関数の積分. . . . 11
1
第 1 章 曲線と曲面の基礎
特に断わらない限り、関数や写像は
C ∞
級のものだけを考える。1.1
平面曲線の概念微分しても
0
にならない一次元的拡がりを持つものを曲線と呼びたい。定義
1.1.1
実数の区間I
から平面R 2
への写像p
の微分がI
のすべての点で0
にな らないとき、pの像p(I)
を曲線と呼ぶ。p: I → R 2
をこの曲線のパラメータ表示 と呼ぶ。適切な条件のもとで平面の開集合上定義された関数が一定値をとる部分集合は、
陰関数定理を使うことにより局所的に曲線の条件を満たすことがわかる。
1.2
平面曲線定義
1.2.1
パラメータ表示p : I → R 2
の定める曲線C = p(I)
の長さL(C)
をL(C) =
∫
I
dp dt
dt
によって定める。これはパラメータ表示のとり方に依存しないことがわかる。
a ∈ I
をとりs(t) =
∫ t
a
dp dt
dt
によってt
の関数s(t)
を定めると、ds dt = dp
dt > 0
となり、s(t)は逆関数t(s)
を持 つ。¯p(s) = p(t(s))
によって曲線のパラメータ表示を定めるとd¯ ds p
は単位ベクトル になる。sを弧長パラメータと呼ぶ。曲線の弧長パラメータ表示
p : I → R 2
に対してe 1 (s) = dp ds
によって単位ベク トルe 1 (s)
を定め、e1 (s)
を反時計回りにπ/2
回転させたベクトルをe 2 (s)
で表す。R 2
の内積を⟨ , ⟩
で表す。⟨ e 1 (s), e 1 (s) ⟩ = 1
をs
で微分することにより、de ds
1(s)
はe 2 (s)
に比例することがわかり、de ds
1(s) = κ(s)e 2 (s)
と書ける。⟨ e 1 (s), e 2 (s) ⟩ = 0
と⟨ e 2 (s), e 2 (s) ⟩ = 1
をs
で微分することにより、de ds
2(s) = − κ(s)e 1 (s)
を得る。2
第1
章 曲線と曲面の基礎 定義1.2.2 κ(s)
を曲線の曲率と呼び、de 1 (s)
ds = κ(s)e 2 (s), de 2 (s)
ds = − κ(s)e 1 (s)
をFrenet
の公式と呼ぶ。定理
1.2.3 c
とc ¯
を平面曲線とする。これら二曲線の曲率が一致するための必要十分条件は、回転と平行移動によって
c
は¯ c
に重なることである。実数の区間で定 義された滑らかな関数κ
に対して、sを弧長パラメータとしκ(s)
を曲率として持 つ平面曲線c(s)
が存在する。1.3
空間曲線定義
1.3.1
実数の区間I
から空間R 3
への写像p
の微分がI
のすべての点で0
にな らないとき、pの像p(I)
を曲線と呼ぶ。p: I → R 2
をこの曲線のパラメータ表示 と呼ぶ。定義
1.3.2
パラメータ表示p : I → R 3
の定める曲線C = p(I)
の長さL(C)
をL(C) =
∫
I
dp dt
dt
によって定める。これはパラメータ表示のとり方に依存しないことがわかる。
a ∈ I
をとりs(t) =
∫ t a
dp dt
dt
によってt
の関数s(t)
を定めると、ds dt = dp
dt > 0
となり、s(t)は逆関数t(s)
を持 つ。¯p(s) = p(t(s))
によって曲線のパラメータ表示を定めるとd¯ ds p
は単位ベクトル になる。sを弧長パラメータと呼ぶ。曲線の弧長パラメータ表示
p : I → R 3
に対してe 1 (s) = dp ds
によって単位ベク トルe 1 (s)
を定める。κ(s) =de 1 (s) ds
によって曲率
κ(s)
を定める。κ(s)̸ = 0
とい う前提のもとで、de 1 (s)
ds = κ(s)e 2 (s)
によって単位ベクトルe 2 (s)
を定める。ベ クトル積を使ってe 3 (s) = e 1 (s) × e 2 (s)
によってe 3 (s)
を定めると、各s
に対し てe 1 (s), e 2 (s), e 3 (s)
はR 3
の正の向きの正規直交基底になる。さらにこれらは次のFrenet-Serret
の公式を満たす。de 1 (s)
ds = κ(s)e 2 (s), de 2 (s)
ds = − κ(s)e 1 (s) + τ(s)e 3 (s), de 3 (s)
ds = − τ (s)e 2 (s).
1.4.
空間内の曲面の概念3
定理
1.3.3 c
とc ¯
を空間曲線とする。d 2 c
ds 2 ̸ = 0, d 2 ¯ c
ds 2 ̸ = 0
を仮定する。これら二曲 線の曲率と捩率が一致するための必要十分条件は、回転と平行移動によってc
は¯
c
に重なることである。実数の区間で定義された滑らかな関数κ > 0
とτ
に対し て、sを弧長パラメータとしκ(s)
を曲率τ(s)
を捩率として持つ空間曲線c(s)
が存 在する。1.4
空間内の曲面の概念微分しても退化しない二次元的拡がりを持つものを曲面と呼びたい。
定義
1.4.1
平面R 2
の座標をu, v
で表す。R 2
内の領域D
から空間R 3
への写像p
の偏微分p u , p v
がD
のすべての点で線型独立になるとき、p
の像p(D)
を曲面と呼 ぶ。p: D → R 3
をこの曲面のパラメータ表示と呼ぶ。適切な条件のもとで空間の開集合上定義された関数が一定値をとる部分集合は、
陰関数定理を使うことにより局所的に曲面の条件を満たすことがわかる。
1.5
第一基本形式と第二基本形式曲面のパラメータ表示
p : D → R 3
に対してp u , p v
の張る平面を接平面と呼ぶ。R 3
の内積を接平面に制限したものを第一基本形式という。接平面の基底p u , p v
に 関する第一基本形式の表現行列は[ ⟨ p u , p u ⟩ ⟨ p u , p v ⟩
⟨ p v , p u ⟩ ⟨ p v , p v ⟩ ]
となる。そこで
E = ⟨ p u , p u ⟩ , F = ⟨ p u , p v ⟩ = ⟨ p v , p u ⟩ , G = ⟨ p v , p v ⟩
とおくと、第 一基本形式の表現行列は[
E F
F G
]
となる。p
u , p v
の双対基底をdu, dv
で表すと、第 一基本形式はEdudu + 2F dudv + Gdvdv
と表せる。p u × p v
は接平面に直交しe = p u × p v
| p u × p v |
は単位法ベクトルになる。(u
0 , v 0 ) ∈ D
における単位法ベクトルをe 0 = e(u 0 , v 0 )
で表し、関数f (u, v)
をf (u, v) = ⟨ e 0 , p(u, v) ⟩
4
第1
章 曲線と曲面の基礎 によって定めると、曲面片は(u 0 , v 0 )
の近くでf(u, v)
のグラフとみなすことができ、その
Hessian
によって形を把握できる。このHessian
を第二基本形式という。接平面の基底
p u , p v
に関する第一基本形式の表現行列は[ ⟨ e, p uu ⟩ ⟨ e, p uv ⟩
⟨ e, p vu ⟩ ⟨ e, p vv ⟩ ]
となる。そこで、L
= ⟨ e, p uu ⟩ , M = ⟨ e, p uv ⟩ = ⟨ e, p vu ⟩ , N = ⟨ e, p vv ⟩
とおくと、第二基本形式の表現行列は
[
L M
M N
]
となる。第二基本形式は
Ldudu + 2M dudv + N dvdv
と表せる。⟨ e, e ⟩ = 1
よりe u , e v
は曲面の接ベクトルになることがわかる。よってe u , e v
はp u , p v
の線形結合になる。線形結合の係数を求めることができ、e u = − GL + F M
EG − F 2 p u + F L − EM EG − F 2 p v , e v = − GM + F N
EG − F 2 p u + F M − EN EG − F 2 p v
を得る。1.6
曲面の曲率定義
1.6.1
曲面の第二基本形式の固有値をκ 1 , κ 2
で表し、曲面の主曲率と呼ぶ。主曲率の積
K = κ 1 κ 2
をGauss
曲率と呼び、平均H = 1 2 (κ 1 + κ 2 )
を平均曲率と 呼ぶ。定理
1.6.2
パラメータ表示p
によって定まる曲面片のGauss
曲率K
と平均曲率H
は次の表示式を持つ。K = ⟨ e, p uu ⟩⟨ e, p vv ⟩ − ⟨ e, p uv ⟩ 2
⟨ p u , p u ⟩⟨ p v , p v ⟩ − ⟨ p u , p v ⟩ 2 ,
H = ⟨ p u , p u ⟩⟨ e, p vv ⟩ − 2 ⟨ p u , p v ⟩⟨ e, p uv ⟩ + ⟨ p v , p v ⟩⟨ e, p uu ⟩ 2( ⟨ p u , p u ⟩⟨ p v , p v ⟩ − ⟨ p u , p v ⟩ 2 ) .
前節のE, F, G, L, M, N
を使って表示するとK = LN − M 2
EG − F 2 , H = EN − 2F M + GL
2(EG − F 2 ) .
5
第 2 章 曲率と長さ、面積、体積
2.1
曲線に関係する長さ、面積と体積定理
2.1.1
平面曲線C
の弧長パラメータ表示をp : I → R 2
で表し、r > 0
とする。T r (C) = { p(s) + te 2 (s) | s ∈ I, − r ≤ t ≤ r }
とすると、r
≤ 1/ max {| κ(s) | | s ∈ I }
のとき、Tr (C)
の面積A(T r (C))
は次の等式 を満たす。A(T r (C)) = 2rL(C).
ただし、T
r (C)
に自己交叉がある場合、A(Tr (C))
は交叉の回数だけ数える。以下の面積、体積に関する主張でも、考えている図形に自己交叉がある場合は 交叉の回数だけ面積、体積を数えることにする。
補題
2.1.2
平面曲線C
の弧長パラメータ表示をp : I → R 2
で表し、r > 0
とする。S r (C) = { p(s) + te 2 (s) | s ∈ I, 0 ≤ t ≤ r }
とすると、r≤ 1/ max {| κ(s) | | s ∈ I }
のとき、A(S r (C)) = rL(C) − r 2 2
∫
I
κ(s)ds.
命題
2.1.3 p : I → R 2
を平面単純閉曲線の弧長パラメータ表示とする。パラメー タが反時計回りのとき、∫
I
κ(s)ds = 2π
であり、パラメータが時計回りのとき、∫
I
κ(s)ds = − 2π
である。定理
2.1.4
平面単純閉曲線C
の時計回りの弧長パラメータ表示ををp : I → R 2
で表し、0< r ≤ 1/ max {| κ(s) |}
とするとA(S r (C)) = rL(C) + πr 2 .
6
第2
章 曲率と長さ、面積、体積 命題2.1.5
定理2.1.1
または補題2.1.2
と同じ設定のもとで、C r (C) = { p(s) + re 2 (s) | s ∈ I }
とすると、L(C r (C)) = L(C) − r
∫
I
κ(s)ds.
定理
2.1.6
空間曲線C
の弧長パラメータ表示をp : I → R 2
で表し、d 2 p
ds 2 ̸ = 0, r > 0
とする。B r 2 = { (u, v) ∈ R 2 | u 2 + v 2 ≤ r } ,
T r (C) = { p(s) + ue 2 (s) + ve 3 (s) | s ∈ I, (u, v) ∈ B r 2 }
とすると、r
≤ 1/ max { κ(s) | s ∈ I }
のとき、Tr (C)
の体積V (T r (C))
は次の等式 を満たす。V (T r (C)) = πr 2 L(C).
2.2
曲面に関係する面積、体積定理
2.2.1 p : D → R 3
を曲面S
のパラメータ表示とする。r >0
に対してT r (S) = { p(u, v) + te(u, v) | (u, v) ∈ D, − r ≤ t ≤ r) }
とすると、r
≤ 1/ max {| κ 1 (u, v) | , | κ 2 (u, v) | | (u, v) ∈ D }
のとき、Tr (S)
の体積は 次の等式を満たす。V (T r (S)) = 2rA(S) + 2 3 r 3
∫
S
KdA.
ここで、dA
= | p u × p v | dudv
である。定理
2.2.2
定理2.2.1
と同じ設定のもとで、T r + (S) = { p(u, v) + te(u, v) | (u, v) ∈ D, 0 ≤ t ≤ r }
とすると、Tr + (S)
の体積は次の等式を満たす。V (T r + (S)) = rA(S) − r 2
∫
S
HdA + 1 3 r 3
∫
S
KdA.
定理
2.2.3
定理2.2.1
と同じ設定のもとで、S r (S) = { p(u, v) + re(u, v) | (u, v) ∈ D }
とすると、Sr (S)
の面積は次の等式を満たす。A(S r (S)) = A(S) − 2r
∫
S
HdA + r 2
∫
S
KdA.
2.3. Gauss
の基本定理7
2.3 Gauss
の基本定理定理
2.3.1
曲面のGauss
曲率は第一基本形式から定まり、第二基本形式には依存しない。
証明の概略
p uu , p uv = p vu , p vv
をR 3
の基底p u , p v , e
による線形結合で表し、p uu = Γ 1 11 p u + Γ 2 11 p v + Le,
p uv = Γ 1 12 p u + Γ 2 12 p v + M e = p vu = Γ 1 21 p u + Γ 2 21 p v + M e, p vv = Γ 1 22 p u + Γ 2 22 p v + N e
によって
Γ k ij
を定めと、[
Γ 1 11 Γ 1 12 Γ 1 22 Γ 2 11 Γ 2 12 Γ 2 22 ]
= [
E F
F G
] − 1 [
1
2 E u 1 2 E v F v − 1 2 G u F u − 1 2 E v 1 2 G u 1 2 G v
]
となって、Γ
k ij
をE, F, G
とこれらの微分によって表現できる。次にp uuv
とp uvu
が 等しいことを利用して、K = 1 E
( ∂ Γ 2 11
∂v − ∂ Γ 2 12
∂u + Γ 1 11 Γ 2 12 + Γ 2 11 Γ 2 22 − Γ 1 12 Γ 2 11 − Γ 2 12 Γ 2 12 )
を得る。したがって、K は
E, F, G
とこれらの微分によって表現できることがわ かる。8
第 3 章 地図投影法
地図投影法とは地球の表面の一部を平面の一部に対応させる方法である。数学 的には球面の開集合と平面の開集合の間の微分同型写像を考える。球面の
Gauss
曲率は正の一定値であるのに対して、平面のGauss
曲率は0
だから、この微分同 型写像を等長的にすることはできない。等長的にはできなくても微分同型写像が 球面の図形のいずれかの幾何学的特徴を保つようにしたい。ここでは面積を保つ ものと角度を保つものについて説明する。面積を保つものを正積投影図法、角度 を保つものを正角投影図法と呼ぶ。3.1
正積投影図法球面と平面の間の面積を保つ写像は古代ギリシャの数学者
Archimedes
にまで遡 る。これは地図投影法の分野ではLambert
正積円筒図法と呼ばれている。r > 0
に対してϕ : S 1 (r) × [ − r, r] → S 2 (r) ; (x, y, z) 7→
( √
r 2 − z 2
r x,
√ r 2 − z 2 r y, z
)
によって
ϕ
を定める。S1 (r) × [ − r, r]
のパラメータ表示p : [0, 2π] × [ − r, r] → S 1 (r) × [ − r, r] ; (θ, z) 7→ (r cos θ, r sin θ, z)
と
S 2 (r)
のパラメータ表示q = ϕ ◦ p
によって、ϕの性質を調べることができる。| p θ × p z | = | q θ × q z | = r
となり、写像
ϕ
は面積を保つことがわかる。すなわち、円筒S 1 (r) × [ − r, r]
の任意 の領域とϕ
によって対応する球面S 2 (r)
の領域の面積は等しい。特に、A(S 1 (r) × [ − r, r]) = A(S 2 (r)) = 4πr 2 .
3.2
共形写像曲面の間の接ベクトルの角度を保つ写像を考えるため、まず内積を持つベクト ル空間の間のベクトルの角度を保つ線形写像について考える。
3.2.
共形写像9
定義3.2.1
内積を持つベクトル空間の0
ではない元u, v
に対してCauchy-Schwarz
の不等式より
⟨ u, v ⟩
| u | · | v | ≤ 1
が成り立ちcos θ = ⟨ u, v ⟩
| u | · | v |
を満たす
0 ≤ θ ≤ π
がただ一つ定まる。このθ
をu, v
の間の角度と呼び∠ (u, v)
で 表す。命題
3.2.2 U, V
を内積を持つベクトル空間とする。線形写像f : U → V
がベクト ルの角度を保つこととf
によるV
の内積の引き戻しがU
の内積の正の定数倍にな ることは同値である。これは、ある正の定数c
が存在して⟨ f (u), f (v) ⟩ = c ⟨ u, v ⟩ (u, v ∈ U)
が成り立つことを意味する。定義
3.2.3
曲面の間の写像の微分写像が接ベクトルの角度を保つとき、この写像を共形写像と呼ぶ。
曲面
S
からS ′
への写像f
が共形写像であるとは、曲線c 1 , c 2 : ( − ϵ, ϵ) → S
がc 1 (0) = c 2 (0)
を満たすとき、∠ ((f ◦ c 1 ) ′ (0), (f ◦ c 2 ) ′ (0)) = ∠ (c ′ 1 (0), c ′ 2 (0))
が成り立つことを意味する。命題
3.2.2
より、S
の各点の接平面の第一基本形式とf
によって対応するS ′
の接平面の第一基本形式はスカラー倍になる。このスカラー はS
の点に依存して変化しS
上の関数になる。定義
3.2.4
曲面S
のパラメータ表示p : D → R 3
が、Dの曲面とみなして共形写 像になるとき、Sの点に対してp
によって定まるD
の点のu, v
座標を対応させるu, v
を等温座標系と呼ぶ。一般の第一基本形式は
Edudu + 2F dudv + Gdvdv
であるが、これがuv
平面の通 常の内積のスカラー倍になるためにはE = G, F = 0
が必要十分である。したがっ て、第一基本形式がE(dudu + dvdv)
となる座標系が等温座標系であるということ もできる。xz
平面のz
軸と交わらない曲線x = u, z = g(u)
10
第3
章 地図投影法 をz
軸の回りに回転した回転面はパラメータ表示p(u, v) = (u cos v, u sin v, g(u))
を持つ。このパラメータ表示を利用して回転面に等温座標系が存在することを証 明できる。第一基本形式は
(1 + g ′ (u) 2 )du 2 + u 2 dv 2 = u 2
(√ 1 + g ′ (u) 2
u du
) 2
+ dv 2
となり、uの関数
w
をdw du =
√ 1 + g ′ (u) 2 u
を満たすようにとれば、上記計量は
u 2 (dw 2 + dv 2 )
となる。したがって、w, vは回 転面の等温座標系である。3.3
正角投影図法前節の最後に求めた回転面の等温座標系を球面の場合に具体的に求める。これ により、正角投影図法が得られる。
原点中心、半径
r
の球面の回転面としての母線はg(u) = ± √
r 2 − u 2
によって定 まる。問題の座標w
はw = r
∫ du u √
r 2 − u 2 . u = r cos θ
と変換して積分を計算する。w = r
∫ − r sin θdθ r cos θ √
r 2 − r 2 cos 2 θ = −
∫ dθ
cos θ = − log tan ( θ
2 + π 4
) .
上の
1/ cos θ
の積分を含めた三角関数の積分については次の節で扱うことにして、ここではこの座標系を調べる。球面の点
(r cos θ cos v, r cos θ sin v, r sin θ)
すなわ ち、緯度θ
経度v
の点に(
v, − log tan ( θ
2 + π 4
))
を対応させる座標系は球面の等温座標系になる。これより、
(
v, log tan ( θ
2 + π 4
))
も等温座標系になる。この等温座標系によって定まる地図投影法は
Mercator
図 法と呼ばれている。3.4.
三角関数の積分11
Mercator
図法について詳しく調べてみよう。対応のし方より、緯度θ
または経度
v
が一定の球面上の曲線は、Mercator図法によって直線が対応する。関数ϕ(θ) = log tan
( θ 2 + π
4 )
の挙動について考える。
dϕ dθ = 1
cos θ
より、(
− π/2, π/2)
においてϕ(θ)
は単調増加になる。さらにϕ : ( − π/2, π/2) → R
は微分同型写像になり、Mercator図法の像は(0, 2π) × R
になる。球面から
(0, 2π) × R
へのMercator
図法による写像Φ
が共形写像であることを 直接確かめることもできる。p(v, θ) = (r cos θ cos v, r cos θ sin v, r sin θ)
とおくと、p(v, θ)は経度v,
緯度θ
の球面の点である。Φ(p(v, θ)) = (
v, log tan ( θ
2 + π 4
))
となる。
p v = ( − r cos θ sin v, r cos θ cos v, 0), p θ = ( − r sin θ cos v, − r sin θ sin v, r cos θ)
は球面の接平面の基底になり、dΦ(p v ) = (1, 0), dΦ(p θ ) = (
0, 1 cos θ
) .
これらの内積の関係から、球面の接ベクトルX, Y
に対してr 2 cos 2 θ ⟨ dΦ(X), dΦ(Y ) ⟩ = ⟨ X, Y ⟩
となり、Φは共形写像であることがわかる。3.4
三角関数の積分この節では、前節で後回しにした
1/ cos θ
の積分を三種類の方法で行う。後にい くほどより適用範囲の広い計算方法で行う。12
第3
章 地図投影法 その一 積分の変数変換をすることなく、被積分関数の形に強く依存した計算方 法である。∫ ϕ
0
dθ cos θ =
∫ ϕ
0
dθ
sin(θ + π/2) =
∫ ϕ
0
dθ
2 sin(θ/2 + π/4) cos(θ/2 + π/4)
=
∫ ϕ
0
1 2
{ cos(θ/2 + π/4)
sin(θ/2 + π/4) + sin(θ/2 + π/4) cos(θ/2 + π/4)
} dθ
= [log sin(θ/2 + π/4) − log cos(θ/2 + π/4)] ϕ 0 = [log tan(θ/2 + π/4)] ϕ 0
= log tan(ϕ/2 + π/4).
その二
t = sin θ
と変数変換する計算方法。dt= cos θdθ
となるため、被積分関数 の形によってはうまく働く。∫ ϕ 0
dθ cos θ =
∫ ϕ 0
cos θ cos 2 θ dθ =
∫ ϕ 0
cos θ
1 − sin 2 θ dθ =
∫ sin ϕ 0
dt 1 − t 2
=
∫ sin ϕ 0
1 2
( 1
1 + t + 1 1 − t
)
dt = · · · = log tan(ϕ/2 + π/4).
その三 一般的に三角関数の分数関数の積分の計算は、t
= tan θ 2
と変数変換し、cos θ = 1 − t 2
1 + t 2 , sin θ = 2t
1 + t 2 , tan θ = 2t
1 − t 2 , dθ = 2dt 1 + t 2
を利用することにより、分数関数の積分に帰着する。∫ ϕ
0
dθ cos θ =
∫ tan
ϕ2
0
1 + t 2 1 − t 2
2dt 1 + t 2 =
∫ tan
ϕ2